2022年10月7日,広島県立福山葦陽高等学校にて,出張授業を行いました。これは高校2年生の「総合的な探求の時間」の一環として行われたものであり,受講生は「学習」をテーマにした調査研究に取り組むグループの生徒たちでした。
5時間目の授業のテーマは「間違いから学ぶ」でした。まず受講生の皆さんには、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の結果を示し,日本の生徒たちが,総じて成績優秀である一方,分からない問題は回答しない傾向,テストに対する高い不安をもつ傾向にあることを読み取ってもらいました。そのうえで,記憶に関する理論や実験結果に基づき,「たとえ間違ってでも答えてみることが学習内容の定着に結びつく」ということを指摘しました。更に,それにも関わらず多くの生徒たちがそうした学習活動の有効性を評価していないことを示す調査結果も示しました。
6時間目の授業のテーマは「調査研究のアドバイス」でした。調査項目の文言作成や後のデータ処理といった技術的なことも多少触れましたが,もっとも伝えたかったことは「調査とは何のために何をすることなのか」というそもそも論でした。すなわち調査は,物理学の実験における測定と同様のものであり,正確な測定こそが何よりも重要であること,調査結果から何かを知ろうとするのではなく,基本的には何かを確かめるために行うもの(いわゆる仮説検証)であることを伝えました。こうした基礎基本をきちんと理解できていれば「何がよい調査なのか」が自ずと見えてくると思いますので,細部の議論も方向性をもって展開していけると思います。
受講生の皆さん方は非常に熱心に聞き入って下さり,葦陽高校の皆さんの探求意欲の高さを感じました。授業の終わりに「話が長すぎて疲れたましたか」と尋ねたところ,受講生のお一人が「あっという間だった」と答えてくださいました。
また,今回,葦陽高校の「総合的な探求の時間」のご担当の吉村佳子先生とは,事前に念入りな打ち合わせを行わせて頂きました。それにより,生徒の皆さんの現在の関心や進捗状況を踏まえたうえで話をすることができました。葦陽高校さんの「総合的な探求の時間」な指導に対する真摯な姿勢にも感銘を受けた次第であります。
この講義が,今後の課題研究活動に何か益するものがあることを願います。最終的な報告書の完成を楽しみにしています。ありがとうございました。